スルーされない技術 石田章洋
公開日:
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本
スルーされない技術 | |
石田 章洋
かんき出版 2014-07-09 |
TV番組は、あきられたらあっという間にチャンネルを変えられてしまう。
つかみが大事だ。
そして、次々と入ってくるCMにも耐え、興味を持ち続けてもらう必要がある。
過酷な環境だ。
その環境で放送作家として30年以上視聴者の心をつかみ続けてきたのが、著者になる。
その技を余すところなく紹介しているのがこの本だ。
目次を眺めてみて、その役立ち度を想像してみてほしい。()内に要点も書いてみた。
第1章 「スルーされる人」と「されない人」の違いとは? Q 一度に多くのことを伝えようとしていませんか? (いいたいことはひとつだけ、なるべく短い言葉で伝える) Q 相手の理解度に合わせて話していますか? (相手の反応をうかがいながら話す) Q ネガティブな言葉を使っていませんか? (ネガポ変換。ポジティブな言葉を最後に持ってくる。関根勤のシュガーコート) Q つい自分を飾ろうとしていませんか? (笑いとは優越感である。自分の欠点をさらす) Q 名言のチカラを活用して話していますか? (名言はすべらない。stay hungy, stay foolish はJobsの言葉ではなかったが、Jobsの言葉になった) Q 絶対にスルーされない言葉を知っていますか? (ほめ言葉はスルーされない) column「SAVE THE CAT の法則」 (映画の王道。主人公に好感をもたせる方法) 第2章 スルーされないつかみのルール つかみのルール1 リードから始める (最初に、課題の要点をずばり言い切る) つかみのルール2 そこはかとない不安を煽って始める (不安でつかんで、安心でおとす) つかみのルール3 訴求ポイントで始める (必ず聞き手の心をつかむ話題がある。ジョン・ケーブルズの本に書かれた12項目) つかみのルール4 共感を得て始める (共通点を探して、そこから話を始める) つかみのルール5 サプライズで始める (逆説的な切り口からはじめると、人は引き込まれる。「千円札は拾うな」) つかみのルール6 「サイレント」から始める (プレゼン時に、間を作ってみる。古池の法則。たしかに効き目がある) つかみのルール7 謎で始める (あえて謎めいて話を始めてみる。朝起きたら知らない女性が寝ていた) つかみのルール8 相手の名前を呼んで始める (自分の名前はスルーすることができない) column 「話すとは放すことである」 (放した言葉はもう取り返しがつかない) 第3章 つかんで離さないためのルール 引き寄せテクニック1 わかりやすく例えて引き寄せる (ふだんから例えをメモしてストックしておく。オレは伊能忠敬か!) 引き寄せテクニック2 イメージが広がるように伝える (五感を活用して、聞き手にイメージが広がる話をする) 引き寄せテクニック3 描写して伝える (情景を思い浮かべられる話をする「しばらく席を立てなかった」) 引き寄せテクニック4 レトリックを駆使して伝える (「大雨の時のワイパーか!」「(背が)これ以上いくと高山病になるよね」) 引き寄せテクニック5 ストーリーを意識して伝える (無生物でも、人間を描くとストーリーができる。「パソコンのご機嫌が悪い」) 引き寄せテクニック6 ザイガニック効果を利用する (未完結な情報は記憶に残りやすいというザイガニック効果を利用する) 引き寄せテクニック7 フックをかけ続ける (? → ! の法則。疑問を持たせて、回答を出すの繰り返し) 使える(かもしれない)例え集 「一休さんの将軍か!」 第4章 また会いたいと思わせる話の締めくくり方 まとめ方のコツ1 トークや共感をもう一度レビューしてから、話を締める (締めにレビューすると忘れない) まとめ方のコツ2 「宿題」を出して、話を締めくくる (自分で自分に宿題を出して、次回会うきっかけとする) まとめ方のコツ3 出発点に戻って話を締めくくる (スタートに戻る形で終わるのが最も快い。世界ふしぎ発見! の構成) まとめ方のコツ4 「次の機会を楽しみに」させる (次回をにおわせると好印象となる) まとめ方のコツ5 最後を「笑い」で締めくくる (最後は笑い。笑いはスルーされない) 第5章 明日から使える伝え型 スルーされない伝え型1 共感してもらえる型 (体験・出来事→感想・印象→視点・分析。 独自の視点を入れよう) スルーされない伝え型2 謝って許してもらう型 (事実&謝罪→想像→過去→現在→未来) スルーされない伝え型3 時系列を超えたストーリーの型 (現在→過去→未来 の迷い道の法則) スルーされない伝え型4 伝えたいテーマにフォーカスさせる型 (大状況→中状況→小状況。俯瞰してから細かいところにはいっていく) スルーされない伝え型5 王道の伝え型 (起承転結。モナリザは2枚あった! の例) スルーされない伝え型6 説明・説得する話の型 (クイズ番組が王道。事実の報告→問題提起→解答→説明) スルーされない伝え型7 ナナヘソナスの法則 (なに? なぜ?へぇ! そう! なるほど!すっきり!! モナリザの絵は2枚あった!(なに?)) column 人を感動させるストーリーの定石は「神話の法則」 (クリストファー・ボグラーの「神話の法則」出立・離別→試練・通過儀礼→帰還)
著者は放送作家で、「世界ふしぎ発見!」や「情報プレゼンター・とくダネ」を担当されている。もともとは落語家を目指して三遊亭円楽に弟子入りしていたらしい。その辺りの話は、あとがきで引用されている伊集院光の「のはなし」からの抜粋に詳しい。
大学を中退して数年間落語家として働いたことは放送作家として働くために役に立っているのだろう。この本には30年ちかく放送作家として日々苦労してきた著者の、聴衆にスルーされない技術が惜しみなく紹介されている本だった。
実用的な話が多いので、さっそく会社や学校のプレゼンで使えそうだ。
ちなみに、ジョン・ケーブルズがあげている、スルーできない話題とはこちら。たしかに気になるものが多い…
- 収入を増やす
- お金を節約する
- もっと健康に
- 医療対策
- 老後の安心
- 喜び
- 家事をもっと楽に
- 快適さ
- 脂肪をもっと減らす
- 心配から解放される
- 仕事やビジネスで成功する
- 名声
ザ・コピーライティング―心の琴線にふれる言葉の法則 | |
ジョン・ケープルズ 神田 昌典
ダイヤモンド社 2008-09-20 |
神話の法則や、物語の法則もそのうち読んでみたい。
神話の法則 夢を語る技術 | |
クリストファー・ボグラー
ストーリーアーツ&サイエンス研究所 2010 |
物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術 | |
クリストファー・ボグラー デイビッド・マッケナ 府川由美恵
アスキー・メディアワークス 2013-09-26 |
この本は、ReviewPlusから献本いただきました。
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