風力発電の非常に残念な現状を知ることができる本 「風力発電の不都合な真実」
風力発電には低周波被害がある、というのは何度か目にしていたが、羽根が回ることによって低周波の騒音が発生するのかな、と思っていたくらいだった。たまたま人に紹介されてこれを読んで、あまりの現状のひどさに驚いた。
確かに、現状だと風力発電の導入には非常に慎重になった方がいい。
近隣の住民に深刻な騒音被害を与えるし、ワシなど鳥類や、コウモリにまで危害を与え、しかも発電する電力は非常に不安定で、風力発電によって、火力や原子力などの発電量は全く減っていないらしい。風力発電所を建設する企業側は、国からの補助金を期待している(国のずさんな管理で、ほぼ企業側のいいなりでもらえるとのこと)だけで、発電のことは考えていない。
- 風車は常に風上を向いている必要があり、常に電気を使ってモーターを回し、巨大なナセル(支柱)を回転させる必要がある。この際に様々な騒音が発生するらしい。低周波の音は二重サッシくらいでは防げない模様。1km四方まで周囲に害を与えたりするらしい
- ワシなど鳥類はバードストライクと呼ばれる、風車との衝突で多く死んでいる。大量の風力発電所のあるアメリカでの長年の研究でもバードストライクは回避できていない。しかも、稼働時にブレードから発生する衝撃波で、コウモリは衝突しなくても死んでしまうらしい
- 現状の風力発電は、非常に強い風が吹かないと最大効率で発電されない。われわれが想像する強風では、小さい割合でしか発電されないとのこと。ちょっとした風ではブレードは回るかも知れないが、発電はされていないとのこと
- そもそも、風力発電の発電量は非常に不安定で、これにより火力や原子力の発電所は発電量を全く減らしていない。誤差範囲とのこと。
- 風力発電所を多く建設したとしても、一番電力が使われる夏にはそれほどの強風が日中に多く吹くことはないとされている。台風が来た場合にはブレードが破損する恐れがあるため、そもそも稼働をやめるとのこと
- 故障などのために、風力発電所の稼働率は非常に低い。以前はスペイン製などの風車を使っており、一度故障すると修理までに11ヶ月を要したりするらしい。ほとんど1年間稼働できないことになる(表紙の絵をよく見ると、ブレードが落ちて地面に突き刺さっている)
- 一番の問題は、建設時に国から多額の補助金がほとんど発電所側の言い分通り支払われること。これが、「発電できなくても建設できればいいんです」という発電所側の態度につながっている。
補助金による、発電量が非常に少ない無駄な発電所の建設問題は日本だけでなく、フランス、中国などでも多く発生しているらしい。
風力発電には非常にクリーンなイメージがあってとても印象がよい。このため、笠取山 風力発電 とかで検索すると、のどかなページがたくさん見つかるのだが、この本を読んでから風車を見るととてもおそろしい存在に感じられるだろう。
上記の通り、風力発電に関する現状は惨憺たる状況だ。改善にはまだ何段階かの技術革新が必要そう。それまでは、必要性をよく見極めて、本当に必要と考えられるところだけに、周囲の住民や動物の被害がないことを確認して建設すべきだろう。
というような感想を持ったが、風力発電本はこれしか読んでおらず、反対意見に関しては調べていないのでいや、そんなことはないという事例があれば教えて欲しいところ。
ただ、似たような内容の本は複数存在するようで、決して著者だけの主張ではないようだ。
風力発電は発電しなくてもいい
こちらのページによると、補助金だけでなく、協賛金、援助金も現状の問題を助長しているとのこと。
まずは現状を多くの人に知ってもらうところからだろうか。
風力発電の不都合な真実―風力発電は本当に環境に優しいのか? | |
武田 恵世
アットワークス 2011-04 |
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